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Let me not to the marriage of true minds
Admit impediments. Love is not love
Which alters when it alteration finds,
Or bends with the remover to remove:
O no! it is an ever-fixed mark
That looks on tempests and is never shaken;
It is the star to every wandering bark,
Whose worth’s unknown, although his height be taken.
Love’s not Time’s fool, though rosy lips and cheeks
Within his bending sickle’s compass come:
Love alters not with his brief hours and weeks,
But bears it out even to the edge of doom.
If this be error and upon me proved,
I never writ, nor no man ever loved.
Shakespeare
誠実な心と心が結びつくとき、それを妨げるものが
ありうるなどとは考えたくもない。状況が変わったと知って
自分も変わるようなものは、あるいは相手が離れてしまうと、
自分も離れたくなるようなものは、愛ではない。
そうではない、愛とは、しっかりと立って動かぬ標識、
どんな嵐が起ころうとそれを平然と見つめて微動だにしない。
迷走するすべての舟を導く天の星だ、人間にできるのは
その天空の位置を測ることだけだ、その真価はわからずに。
愛は決して時に愚弄されない、薔薇色の唇や頬は
時の曲がった大鎌の届かぬところへは行けないけれども。
愛は束の間の時間や週の移ろいで変わるものではない、
終末の淵まで断固として持ちこたえるもの。
もしこの考えが間違っていて、反証を突きつけられるなら、
ぼくが書いた詩はすべて偽り、愛なんて嘘、ということだ。
(柴田稔彦 訳)
別訳:
真心と真心との交わりに、よけいな異議を
挟むのは慎んでもらいたい。あいての心が変わるにつれて
変わるような、相手の心が離れてゆくに従って
離れてゆくような、―そんな愛は愛ではない。
言語道断な話だ!愛は、嵐にあってもびくともしない
まさに磐石不動の航海標なのだ。
愛は、大海をさすらう小舟にとってはまさに北極星、
高さは測りえても真価は測りしれないものなのだ。
愛は「時間」に弄ばれる道化ではない―たとえ、
その曲がった鎌で薔薇色の唇や頬が台なしにされてもだ。
慌ただしく月日がたっても聊(いささ)かも変わらず、世界の終焉の
間際まで毅然として堪えてゆくもの、それが愛なのだ。
もしこれが誤りで、私の考えが嘘だとしたら、―私は詩を
書かなかったの同然、この世に愛した者がいなかったも同然だ。
(平井正穂 訳)